2025.12.22 広告運用

高騰するWeb広告のクリック単価…広告費高騰時代、中小企業が「少ない予算で成果を出す」ためにやるべきこと

「去年はクリック単価(CPC)が500円台だったのに、今年見たら1,000円を超えている……」
「予算はこれ以上増やせない。でも、入札を下げたら表示されなくなってしまった」

最近、管理画面を見てこのように頭を抱えた経験はないでしょうか。
私たちオーシャンズは、日々多くの中小企業様のデジタル広告運用をサポートしていますが、この「クリック単価の高騰」は、特定の企業だけでなく業界全体で起きている深刻な課題です。

実際に、私たちが支援しているクライアント様でも、Google広告にて同じキーワードのクリック単価が、昨年比で約5倍に跳ね上がったケースがあります。
Google広告に限らず、Yahoo!、Microsoft、Meta広告(Facebook/Instagram)など、運用型広告全般で今、上昇が止まらない状況です。

そんな時、慌てて「とにかく入札単価を下げる」設定に変えたり、「クリック単価が高いキーワードを停止する」といった”守りの調整”に走ってはいないでしょうか?

残念ながら、管理画面上の細かい設定変更だけでは、根本的な解決にはなりません。

しかし、諦める必要はありません。 「予算を増やさずに、クリック単価高騰時代に成果を出すための戦略」は確実に存在します。 それは、機械的なテクニックではなく、「伝え方」を変えるという、より本質的なアプローチです。

本記事では、広告費高騰時代に中小企業が、予算を上げずに成果を出し続けるために必要なことを具体的に解説します。

なぜ今、あらゆるWeb広告でクリック単価は上がり続けるのか?

「なぜ高いのか?」を知ることは、正しい対策の第一歩です。背景には、Web広告市場における構造的な「2つの変化」があります。

1. 「オークション」への参加者(競合)の激増

Web広告の多くはオークション形式です。 デジタル集客が当たり前になった今、かつてはテレビCMやチラシ、看板に予算を使っていた企業が、一斉にWeb広告へ予算をシフトしています。
広告を掲載したい人(広告主)が増えれば、掲載する場所(広告枠)の値段が上がる。
これは経済の原理原則であり、今後もWeb広告の市場価格が下がる可能性は低いことが考えられます。


2. インテントマッチやP-Maxなど「AI自動配信」の主流化

近年、Googleの「P-Max」や「インテントマッチ(部分一致)」「AI最大化」、Meta広告の「Advantage+」など、AIが自動的にターゲティングを行う配信が主流になりつつあります。
非常に便利な機能ですが、AIは「成果が出そう」と判断すれば、これまで入札していなかったキーワードや配信面にも自動で入札を行います。

これにより、「これまでは競合しなかった異業種や大手企業」とも入札合戦が起きるようになり、結果として相場が釣り上がっているのです。

P-Max キャンペーンについて:Google広告ヘルプ
インテントマッチについて:Google広告ヘルプ
MetaAdvantage+について:Meta広告ヘルプ

「クリック単価を下げる」施策は危険。陥りやすい「縮小の罠」

予算が増やせない時、多くの担当者は反射的に「入札単価の上限を下げる」という処置を行います。
しかし、最近はこの対応が逆効果になるケースが増えています。

  • ケース①:表示機会の激減(オークションに負け、誰にも見られなくなる)
  • ケース②:ユーザーの質の低下(安かろう悪かろうなクリックしか集まらない)

クリック単価が安い場所には、安いなりの理由があります。

  • ユーザーの質が低い:まだ検討段階ですらなく、暇つぶしで見ているだけの層。
  • 掲載面の質が低い:誤クリックを誘発するような質の低いサイトやアプリ。

このように、無理にクリック単価を抑え込んだ結果、配信量が伸び悩んだり、配信量が確保できたとしても、「クリックされても問い合わせが来ない」「成約に繋がらない」という現象が起きます。
これでは、貴重な予算が無駄に使われます。


ここで一つ、弊社の事例を紹介させていただきます。

Meta広告にて「クリック単価の抑制」を目的とした「クリック最大化」と、「獲得率(CVR)」を重視した「CV数最大化」。
この2つの入札戦略でABテストを行いました。

結果は以下の通りです。


クリック単価の抑制を重視した配信では、確かにクリック単価(CPC)は安くなりました。
しかし肝心の獲得率が伸び悩み、最終的な獲得単価(CPA)で見ると、獲得率を重視した配信の方が良好な結果となりました。
またWebサイト上の動きを見ても、クリック単価を重視した配信の方が「エンゲージメント率が低く、直帰率は高い(=ユーザーがすぐに離脱している)」という結果が出ています。

このように、クリック単価を無理に下げようとした結果、見込みの低い配信面やユーザー層への露出が増えてしまうことがあります。その結果、質の低い流入ばかりが増え、トータルの成果が悪化するケースがあります。
今後もクリック単価は、市場の影響で高騰し続ける可能性が高いでしょう。そのため、「クリック単価をどう抑えるか」に悩むのではなく、別の視点を持つ必要があります。

そこで私たちは提案します。 「クリック単価(CPC)を下げる努力」はやめましょう。 その代わりに、「獲得率(CVR)を上げる努力」に全集中しましょう。

なぜ「クリック単価」ではなく「CVR」に集中すべきなのか?

簡単な算数で、CVR(獲得率)の重要性を証明しましょう。 広告の成果指標であるCPA(獲得単価)は、以下の式で成り立っています。

CPA(1件獲得するコスト) = CPC(クリック単価) ÷ CVR(獲得率)

多くの企業は、分子の「CPC」を下げようと必死になります。しかし、今の市場環境でクリック単価を安くすることは難しく、無理に下げれば分母の「CVR」まで下がってしまいます。

一方、高騰時代に勝っている企業は、分母の「CVR」を見ています。

  • 企業A(単価を気にする)
    クリック単価を200円に抑えた。しかし、LP(ランディングページ)の魅力が足りず、100人に1人しか申し込まない(CVR 1%)。 → CPA(獲得コスト):20,000円
  • 企業B(CVRに集中する)
    クリック単価は400円と高い(質の良い客・激戦区)。しかし、LPで顧客の心を動かし、100人に3人が申し込む(CVR 3%)。 → CPA(獲得コスト):13,333円
比較項目【企業A】
クリック単価を気にする
【企業B】
CVRに集中する
戦略とにかくCPCを下げる
(安さ追求)
顧客の心を動かしCVRを上げる(価値追求)
クリック単価 (CPC)200円(安い!)400円(高い…)
獲得率 (CVR)1%(100人に1人)3%(100人に3人)
結果:獲得単価 (CPA)20,000円(割高)13,333円(安い!)
結論× 予算を捨てている状態◎ 高騰時代に勝てる本質的なマーケティング

いかがでしょうか?
クリック単価が2倍になっても、獲得率が3倍になれば、結果として獲得コストは安くなるのです。

このようにCVRを向上させることが、クリック単価高騰時代に中小企業が目指すべき「本質的なマーケティング」であり、今後勝ち残るための唯一の勝ち筋です。


CVR(獲得率)を上げるために、まずやるべきたったひとつのこと

「CVRを上げよう」と言うと、多くの人が小手先の施策に走りがちです。

  • 「CVRの高いキーワードの配信量を増やそう」
  • 「ボタンの色を赤にするか、緑にするか」
  • 「キャッチコピーをもっと煽ってみよう」

しかし、Web広告が普及して、広告慣れしている今、ユーザーも慎重になっています。小手先のテクニックで心が動くほど甘くはありません。一時的に成果が出ても、すぐに頭打ちになってしまいます。

私たちが考える、CVRを確実に上げるためにまずやるべきたったひとつのこと。 それは、「管理画面から離れ、顧客に向き合い、インサイトを見つけること」です。

「既存顧客」からインサイト(本音)を見つける

広告配信をしていく中で、思ったより獲得が少ないのは、「ユーザーがサービスを選ぶ理由」と「企業が伝えたいこと」に『ズレ』があることが原因であるケースが少なくありません。

このズレを解消するヒントは、広告の管理画面にはありません。あなたの会社の「既存顧客」の中にあります。

例えば、あるリフォーム会社様の事例です。 当初はLPで「最新キッチンが30%OFF!」と安さを訴求していましたが、CVRは伸び悩んでいました。しかし、顧客に話を聞くと、下記のような声が多くあることがわかりました。

「値段も大事だけど、実は『工事に来る職人さんが怖い人だったら嫌だな』というのが一番不安だったんです」

この声を聞き、LPのトップ画像を「キッチンと安さ訴求」から「笑顔の職人さん全員の集合写真」に変更し、「マナー研修修了証」を掲載しました。 その結果、価格訴求は一切強めていないのに、CVRは2倍に跳ね上がりました。

企業側は「ユーザーは価格で選んでいる」と思っていましたが、実際は「安心できる人が来るか」を重視していたのです。 顧客の声を聞くことで、刺さる訴求が「価格」から「安心」へと変わり、成果が劇的に改善するといったことがあります。


「ズレ」を正せば、成果は変わる

このように、実際に既存顧客から情報を聞くことで、企業側の思い込みとユーザーの認識の「ズレ」に気づくことができます。そして、「誰に」「何を」「どう伝える」必要があるのかを再認識できます。

それをもとに、ターゲティングやクリエイティブ、LPを再構築することで、CVRは大きく改善します。

私たちオーシャンズが伴走支援に入る際、必ず行うのが「既存顧客へのインタビュー」です。

  • 「なぜ、他社と比較した上で、最終的に当社を選んでくれたのですか?」
  • 「サービスを選ぶ直前、どんなことに一番『不安』を感じていましたか?」


様々な視点からヒアリングを行い、既存の顧客がどうして自社のサービスに出会い、選択し、価値を感じているのかを知る。 そうすることで「ズレ」を解消し、正しいターゲットに刺さる価値を広告で届けることができるのです。

まとめ:小手先の施策ではなく、「誰に・何を・どう伝えるか」を磨く

クリック単価の高騰は、もはや避けられない市場の波です。 しかし、この波に飲み込まれる企業と、波を乗りこなして成長する企業の違いは、管理画面の設定スキルではありません。

「顧客の心をどれだけ深く理解できているか」

この一点に尽きます。

本記事でお伝えした通り、獲得率(CVR)を向上させるためには、ボタンの色を変えるようなUI改善も重要ではありますが、 まずは顧客のインサイト(表面化していない本音や不安)を徹底的に分析し、「誰に」、「何を」、「どう伝える」という点を磨くのはもっと重要です。

  1. Who(誰に): どんな不安や痛みを抱えている人に届けるのか?(ターゲットの明確化)
  2. What(何を): その不安を解消するために、自社のどの価値(強み・想い)を約束するのか?(メッセージの定義)
  3. How(どう): それをどのような言葉、写真、オファーで届ければ、心が動くのか?(伝え方の最適化)


この「Who・What・How」の精度を高め、広告に落とし込むことができれば、高騰するクリック単価をものともしない、良い成果を生み出します。


「予算がないから」と諦める必要はありません。 予算を増やさなくても、顧客への理解を深め、伝え方を変えるだけで、成果は大きく変えられます。

もし、「自社の顧客のインサイトが深く掴みきれない」「誰に何を伝えるべきか、整理がつかない」と悩まれているなら、ぜひオーシャンズにご相談ください。

私たちは単なる広告運用代行ではありません。
あなたの会社の「価値」を言葉にし、顧客の心を動かすマーケティング・パートナーとして、全力で伴走いたします。

何から手をつければよいかわからない、という段階でも全く問題ありません。

まずは貴社の想いや課題をお聞かせいただくことから、一緒に始めさせてください。

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この記事を書いた人

筑波 柊#広告運用コンサルタント

リスティング、SNSの広告運用をメインに最新の広告トレンドを踏まえた実践的なアプローチとデータ分析を基にした効果改善を軸に企業の目標達成をサポート。
広告運用にとどまらず、導線設計やクリエイティブ改善まで支援。数字の裏にある課題を見抜き、成果につなげる。

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