2025.08.29 戦略設計

【失敗しない】中小企業のデジタルマーケティング|成功の鍵は「戦略」にあり

はじめに:その施策、本当に成果につながっていますか?

オーシャンズ株式会社で中小企業のマーケティング支援を担当している寺井です。
近年、事業成長において「デジタルマーケティング」の重要性はますます高まっています。
しかし、多くの経営者や担当者から「何から手をつければよいかわからない」「いろいろ取り組んでいるが成果が出ない」という切実なご相談をいただきます。
この記事は、まさにそのようなお悩みをお持ちの地方・中小企業の皆さまに向けて執筆しました。

【要注意】中小企業が陥りがちなデジタルマーケティングの落とし穴

以下のような取り組みに「良かれと思って」時間やコストを投じていませんか?
もし一つでも心当たりがあれば、ぜひ一度立ち止まってこの記事を読んでみてください。

落とし穴①:作っただけのWebサイト・LP

補助金を活用して、デザイン性の高い見栄えのよいサイトを制作した。しかし、開設から半年経っても問い合わせは月1件あるかないか。そもそも、誰がこのサイトを見ているのかさえわからない状況。

落とし穴②:始めただけのSNS運用

「これからはSNSの時代」と聞き、InstagramやFacebookを慌てて開始。しかし、何を投稿すればよいかわからず、気がつけば1か月以上更新が止まっている。たまに投稿しても「いいね」をつけてくれるのは、社員かその知人だけ。

落とし穴③:出稿しただけのWeb広告

取引のある代理店に勧められ、または見よう見まねで広告を出稿。クリックされて費用は毎日発生するものの、一向に売上にはつながらない。何が問題なのかもわからず、途方に暮れている状態。

その努力が実らない根本的な理由

これらの失敗に共通する根本的な原因は、施策そのものが悪いのではなく、
目的や戦略を明確にせず、いきなり「施策(やり方)」から始めてしまっている点にあります。

成果が出ないと「もっと優れたWebサイトに作り替えなければ」「もっと魅力的なSNS投稿をしなければ」と、さらに別の施策に目移りしがちです。しかし、それでは根本的な解決にはなりません。

この記事を読めば、成功への「正しい始め方」がわかります

この記事では、小手先のテクニックではなく
中小企業の皆さまがデジタルマーケティングを中心とした
マーケティング施策で成果を出すための「正しい始め方」と「考え方」を解説します。

読み終える頃には、これまでの施策がうまくいかなかった理由と
次に自社が取り組むべきことが明確になっているはずです。

なぜ今、中小企業にこそデジタルマーケティングが必要なのか

「うちは地域密着だから」「これまでは紹介だけでやってこられた」というお声もよく聞きます。
しかし、時代は大きく変化しており、もはやデジタル化は避けて通れない経営課題となっています。

待っていても顧客は来ない時代の到来

顧客の購買行動は、この数年で劇的にオンラインへシフトしました。

株式会社電通デジタルの調査によれば、消費者が何かを購入する際、比較検討フェーズでオンラインチャネルを利用する割合は年々増加し、2024年には55.7%に達しています。
これは、お客様が店舗を訪れたり、あなたに連絡したりする前に、すでにスマホやPCでライバル社の情報と比較し、購入するものをほぼ決めているという現実を意味します。

画像引用元: 株式会社電通デジタル「生活者のリスクヘッジ購買が進むデジタル化がもたらす購買行動の変化を調査」

また、これはBtoB(企業間取引)でも同様です。
株式会社日経リサーチの調査では、購買担当者が取引先や製品の情報を収集する際に最も利用するのは「その会社のホームページ(40%)」という結果が出ています。

画像引用元:株式会社日経リサーチ「購買プロセス調査|BtoB企業の情報取集「HP」の重要性が高まる」

つまり、オンライン上に貴社の信頼できる情報がなければ、お客様の比較検討の土俵にすら上がれず、存在しないのと同じことになってしまうのです。

限られた資源を最大限に活かす武器

「デジタルは難しそう」「専門の人材がいない」ブランディングテクノロジー株式会社の調査では、実に4社に1社以上が「社内にマーケティングのノウハウがない」と回答しており、これは中小企業が抱える共通の悩みです。

画像引用元:ブランディングテクノロジー 株式会社調べ「経営者、マーケターなど1,500名を対象とした「マーケティング活動に関する組織課題調査」」


しかし、デジタルマーケティングは正しく活用すれば、限られた予算や人員を最大限に活かせる強力な武器になります。
従来のチラシや営業活動とは異なり、Webサイトのアクセス数や広告のクリック数、問い合わせ件数など、あらゆる活動をデータとして計測・分析できるのが最大の強みです。

データに基づけば、「どの施策に効果があったのか」「どこを改善すべきか」が明確になり、
勘や経験だけに頼らない的確な意思決定が可能になります。

【本質】成果を出す企業は「戦略」から始めている

ここからが本題です。デジタルマーケティングで成果を出すために最も重要なことをお伝えします。
それは、施策(How)の前に、戦略を徹底的に考えることです。

いきなり施策を考えるのが最大の失敗

多くの場合、「Webサイトを作ろう」「SNSをやろう」といった「施策」からスタートしてしまいます。
もちろん、これで成果が出る場合もありますし、出ない場合もあります。
この問題は施策から進めると成果が出ようが出まいが、「なぜ」そうなったったのかが分からない(=振り返りができない)ということです。

これは海図を持たずに航海に出るようなものです。目的地を決めず、現在地もわからずに船を出せば、たまたま良い港に着くこともあれば、嵐に遭って遭難することもあります。運良く目的地についたとしても、「なぜ到着できたのか」がわからなければ、次回も同じ成功を再現することは不可能です。

WebサイトもSNSも広告も、あくまで顧客に価値を届けるための「手段」です。
その手段を動かすための設計図こそが「マーケティング戦略」なのです。

成功の土台となる中小企業のマーケティング戦略とは?

戦略と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は「誰に、何を、どのように伝えて、どうなってもらいたいか」を具体的に決めることです。オーシャンズでは、特に以下のステップを重要視しています。

【Step1】自社の立ち位置を把握する

私が支援したとある住宅会社も、
最初は「Webサイトや広告を出したけど、反響がない」という課題を抱えていました。

「デザイン性の高いモデルハウス紹介」や「価格の安さ」ばかりを強調していたのですが、
既存のお客様へのヒアリングを進めていくと、意外な事実がわかりました。

その住宅会社が選ばれる最大の理由は、「価格」や「デザイン」ではなく、
「地元密着で、担当者が親身に相談にのってくれる安心感」でした。
特に50代・60代のご夫婦からは、「担当者が何度も現地に足を運んでくれて、将来の生活動線まで一緒に考えてくれた」という声が多く寄せられたのです。

このように、自社が“強みだと思っていた点”と、お客様が“本当に価値を感じている点”は
ズレていることが少なくありません

だからこそ、まずは既存顧客(=今いるお客様)の声やその声を近くで聞いている現場担当などから、
情報を冷静に集め、自社の立ち位置を正しく把握することが出発点となります。

Step2市場・競合・外部環境を分析する

顧客理解だけでは「自社の価値」を決め切れない場合があります。
そのため、競合や市場、外部環境の変化を俯瞰して把握することが重要です。

競合分析:同じ業界で競合がどのような強み・訴求軸を持っているかを調べる

  • 価格訴求型か?
  • デザイン特化型か?
  • その強みの裏返しとしての弱みは?

市場分析:顧客のニーズやトレンドを見極める

  • 住宅業界なら「高齢者のバリアフリー需要」「省エネ志向」など
  • BtoBなら「小ロット対応」「スピード納品」へのニーズなど

外部環境分析:業界や社会の動向を踏まえる

  • 法規制の変化(例:省エネ基準強化)
  • デジタル化や購買行動の変化
  • 地域性や人口動態

👉 これらを整理することで、自社がどのポジションで勝負すべきか が明確になります。

【Step3】戦略の骨子を固める

Step1-2で得た客観的な事実をもとに、戦略の核となる要素を定義します。
先ほどの住宅会社の場合も、「価格やデザイン」ではなく「地元密着で親身に対応してくれる安心感」こそが、自社の提供価値だと再定義できました。

ターゲット顧客(誰に?)

理想の顧客像(ペルソナ)を具体的に描きます。住宅会社では「価格よりも安心感を重視し、将来の暮らし方を一緒に考えてくれる会社を求めている50〜60代のご夫婦」と再設定しました。

提供価値(何を?)

ターゲット顧客の悩みを解決できる、自社独自の強み(バリュープロポジション)を明確にします。

施策(どのように?)

その価値を届けるための手段を検討します。住宅会社の例では、「安心感」を伝えるために、SNSでの完成事例ストーリー発信、モデルハウス見学会での生活動線提案、既存顧客の声を活用した事例記事などを選びました。

この戦略があって初めて、
「このターゲットにこの価値を届けるために、どの施策(SNS?広告?イベント?)が最適か?」
という実りのある議論ができます。

「インスタ広告が良いらしい!」「今はYouTubeで動画制作だ」と施策起点での営業などは
「戦略」があれば、自社に必要か、不要かを見極められますね。

オーシャンズの事業伴走について

自社に合ったマーケティング施策を見極める「時間とコストの思考法」

戦略が固まったら、いよいよ具体的な施策の検討です。
ここでも闇雲に手を出すのではなく、
オーシャンズが推奨する「時間とコスト」の2軸で整理し、優先順位をつけていきましょう。

施策は「時間軸」と「コスト」で整理する

デジタルマーケティングの施策は、大きく2種類に分けられます。

  1. 短期的な成果を出す施策(エンジン役)
    └コストをかければ、比較的早く効果が出る
  2. 中長期的な資産になる施策(土台役)
    └効果が出るまで時間がかかるが、一度育てば会社の資産として機能する

この2つの特性を理解し、組み合わせることが重要です。

短期で成果を出す施策(エンジン)

コストをかければ比較的早く効果が出る施策群です。
事業の成長を加速させ、まずはキャッシュを生み出すためのエンジンとなります。

代表的な施策例:Web広告(リスティング広告、SNS広告)、プレスリリースなど

メリット

  • 広告費をかければすぐにターゲットにアプローチできる
  • ABテストなどで市場の反応を早く確かめられる

注意点

  • 広告を止めると集客も止まってしまう
  • 継続的にコストがかかる「消費型」の施策である
画像引用元:株式会社電通「2024年 日本の広告費」

中長期で資産になる施策(土台)

効果が出るまで時間がかかりますが、一度育てば低コストで集客し続ける「資産」となる施策群です。
企業の持続的な成長の土台となります。

代表例:SEO対策(お役立ちブログ記事など)、オウンドメディア、SNSアカウント育成、メールマガジンなど

メリット

  • 会社の資産として残り、継続的な集客が見込める
  • 企業の信頼性も向上する

注意点

  • 成果が出るまでに最低でも半年~1年程度の時間と地道な努力が必要

中小企業におすすめなのは、まず短期施策で素早く成果を出し、そこで得た利益や顧客データを中長期施策に再投資していくことです。この両輪をバランスよく回すことが重要です。

まとめ:中小企業がマーケティングで失敗しないために

今回は中小企業がマーケティングで失敗しないための「正しい始め方」について解説しました。
最後に重要なポイントをもう一度振り返ります。

  1. 失敗の原因は「戦略なき施策」。まずはWebサイトやSNSに飛びつくのをやめましょう。
  2. 成功の鍵は「顧客理解」。答えはいつもお客様の中にあります。
  3. 施策は「時間とコスト」で考える。短期施策で今日の成果を出し、中長期施策で未来の資産を育てましょう。

壮大な計画を立てる必要はありません。
もしあなたが明日から行動を起こすなら、まずこれだけをやってみてください。
社内で一番お客様と接している社員と30分だけ時間をとり、「最近、お客様からどんなことで感謝されましたか?」と聞いてみることです。
売上を伸ばすヒントは、近くに潜んでいるやもしれません。


この記事を読んで、「自社の戦略を一度、プロの視点で見直してみたい」
「顧客について、誰かと壁打ちしながら考えを整理したい」と感じていただけたなら、
ぜひ私たちオーシャンズにご相談ください。

私たちは一方的に施策を提案するコンサルタントではありません。
貴社の想いや顧客に対する誠実な気持ちを深く理解し、共に悩み、共に汗をかくパートナーです。

何から手をつければよいかわからない、という段階でも全く問題ありません。

まずは貴社の想いや課題をお聞かせいただくことから、一緒に始めさせてください。

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この記事を書いた人

寺井 大智#デジタルマーケター

顧客理解を軸にしたクリエイティブ戦略の立案を得意とし、広告・LP・コンテンツの設計から改善までを担う。
デジタルの数字だけでなく、インタビュー調査等から「なぜ行動したのか」を掘り下げ再現性の高い施策を実現。

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